第四部 日韓併合それぞれの苦難 ガイドライン 朝鮮統治三十五年の光と影

3・1独立運動をクライマックスに

第三部は列強圧迫下・苦悩のドラマと題して、併合前までのドラマを見てきたが、本稿から第四部、日韓併合それぞれの苦難と題して、併合35年間の両国、両民族の光と影のドラマを概観してゆく。

ガイドラインとして冒頭、著者が触れているのは同じく大日本帝国が統治した台湾との比較である。台湾では日本統治時代を領台50年とか日本時代とよび、日帝や帝国主義などの用語は使用しない。著者はまず、単純な誤解から指摘する。

 

それに対して韓国は、「日帝36年」である。「日帝」と「36年」が定着してしまった感がある。ところが、期間で言えば、日本が統治したのは36年ではなく、34年と11ヶ月少々であった。また「3・1運動」が起こったのは、日本が韓国を併合してから10年後、と言われているが、実際は8年と6ヶ月後であった。

 

これは現代韓国の言論界への痛快なメッセージである。歴史的事実をまずしっかりと把握してからはじめましょうとでも言うのか、歴史捏造常習犯である韓国言論界への警告である。著者はさらに、

 

第四部では、他国を併合するということはどういうことなのか、日本の朝鮮(併合後、大韓帝国の地域は「朝鮮」と呼ばれた)統治について、多面的に考えてみたい。

 

この多面的というのは著者である名越先生が常に歴史の見方として提唱されていた言葉で、先生のライフワークであったバスツアーのタイトル「歴史パノラマツアー」でも窺い知れる。つまり歴史、とくに近現代史は、一極的見方では片手落ちである。2国間であれば双方の立場にたって概観しなければいけない。また関係国の影響や役割も加味しなければ、歴史の本質はみえてこない。ということだ。

 

著者はまずアメリカの日本占領を次のように評価する。

  1. 占領すると同時に極東国際軍事裁判で日本を侵略国として裁き、マスコミを操作してその「犯罪性」の周知を徹底させた。
  2. 外交防衛のみならず、教育を始め国内の諸制度に対しても変革をおこなった。
  3. 一方、天皇の存在を認め、国体護持の約束はかろうじて果たした。
  4. 内政に対しては間接統治をとり、露骨な干渉は少なかった。
  5. 飢餓に対し食糧援助をおこなった。
  6. 自作農の創設や労働組合活動の自由を認める政策は国民に好意を持たれた。
  7. 日本国民の間にアメリカがいつまでも駐留するわけがないという楽観があり、激しい抵抗運動が起きなかった。

次に日本の韓国併合を、

  1. 朝鮮の反日勢力を裁判にかけて処刑するようなことはしなかった。
  2. 朝鮮の王族や貴族は日本の皇族や華族に列した。
  3. 初代寺内総督は治安を強化し、残虐な司法制度を近代化して、農業、水産業、植林事業、教育制度、福祉制度の振興・改革・確立には李氏朝鮮や大韓帝国時には考えられない恵沢を朝鮮の人々にもたらした。
  4. しかし併合条約の第1号の統治権のすべてを永久にの文言に不満があり、直接統治であった日本統治に我慢がならなかった。

独立運動を起こし弾圧された活動家は海外に逃れ運動を継続した。アメリカ大統領ウイルソンが民族自決主義は彼らを奮い立たせ、1919年に起きたのが3・1独立運動である。この運動は国内のみならず、4月6日にはガンジーが非暴力・無抵抗主義を掲げて民族運動を起こし、5月4日には中国の北京で排日運動(5・4運動)が起こったのである。

 

3・1運動は日本統治に大きな反省を促した。「第三部 列強圧迫下・苦悩のドラマ 統括」で書いた呉善花教授の指摘する日本統治の欧米植民地との相違点第2、武力的な威圧をもっての統治政策を全般的に取らなかったこと。3.1独立運動の教訓から憲兵警察の廃止や言論や出版の制限政策の廃止でその後の抵抗運動が全くなくなったこと。のように3・1運動以後は内鮮融和を掲げ憲兵警察の普通警察への移行、民選の協議会の設置、大学の設置など 、欧米の植民地経営では考えられない政策を実行に移している。

そして著者はこのように語る。

 

一つの民族が他の民族を併合することがいかに困難なことか。いくら相手国に資金を注ぎ込み、生活向上に尽くしても感謝されない。イギリスはアイルランドを140年間にわたって併合したが、感謝されるどころか、今も北アイルランド問題を抱えている。

― 中略 ― 

 

「日帝36年」は、日韓両国にとって喉にかかった骨である。骨を取り除く方法として、逆に韓国が日本を併合した場合を想定してみたらどうであろうか。

 

国際的な政治力学は、似たような原則で動くものなのである。日本が韓国に併合された場合を仮定してみるのである。 そうすると案外相互に反日・嫌韓感情を燃やすほどのことはないことがわかるのではないだろうか。案外お互いにつまらないことでいがみ合っているのかもしれない。

 

一つ言えることは韓国の愛国者を売国奴として侮蔑している韓国人と日本の行為を一方的に韓国に阿る形で糾弾している反日侮日日本人は、時代迎合的な輩だということである。